UAD、怒涛の新作ラッシュ

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UAD、怒涛の新作ラッシュ

 

長いことYouTubeをやっているが、3本同時に動画をアップしたのは昨日が初めてだ。

UADプラグインから怒涛の新作ラッシュ。普通こういうのって分けません?アメリカらしい大胆なプロモーションといえばそうなのか…?

動画は上から順に、

 

・ボーカルミックス専用の「Topline Vocal Suite
・往年のギターアンプシミュレータ「Lion, Dream, Ruby
・世界一有名なコンソールを再現した「SSL 4000 E

 

Toplineは完全新規、アンシミュはギタリストならお馴染み「UAFXペダル」のプラグイン化。SSLは前からあったものの今回でネイティブ化し、誰でも使えるようになった。もちろん前者2つもネイティブ仕様だ。

 

どれも超大型新人。月に1本でも味の濃い情報が一気に3つも出てしまった。どれひとつとして無視はできない。ちなみに、しれっと「Apollo x」の新作が出ていたり、「SSL G Bus Compressor」がネイティブ化していたり、歴代すべてのUADプラグインが収録されたハイパーアルティメットギガンティックウルトラコズミックバンドルが登場していたり、10月のユニバーサルオーディオどうしちゃったの?稼ぎ切って夜逃げの準備?というくらい派手な動きが目立つ。

いやまぁ流石にそれは冗談で、シンプルに勝負をかけているのだろう。ブラックフライデー前のこの時期に注目を集めて、11月の売り上げを爆発させるつもりなのだ。もしかしたらユニバーサルオーディオのみならず、他のメーカーも突然このレベルの発表を仕掛けてくるかもしれない。最近UADに押されぎみのWavesとか。ポツポツと新製品を出しているiZotopeとか。いや、知りませんけどね。というか知ってても書けませんから、逆に書くってことは何も知らないってことです。UADの今回の件は仕事で結構前から知っており、ポロらないように細心の注意を払ってました。オールイングリッシュのいかつい契約書にサインしましたよ。

 

どれも素晴らしい製品だったけれど、特に「SSL 4000 E」には驚いた。今まで私はチャンネルストリップ(=コンソール再現プラグイン。この辺詳しくは↑の動画見てください)として「API Vision」を使っていたのだが、今回触ってみて完ッッ全にSSL派になった。とにかくギターロックとの相性が良い。つまり、私との相性が良い。ギターの音の壁ってこうやって作るんですね、と、DTM11年目にして認識を改めることになった。先日長利くんのスタジオでレコーディングした生ドラム生ベースのバンド音源がSSLでガラッと生まれ変わり、かなり今ホクホクしている。音源がリリースされたらAPIとSSLの比較動画でも作ろうかな。よし、ボツになったAPIの方の音源も消さずにおこう。

自分はSSLの音が好きなのかもしれない。「SSL G Bus Compressor」もずっと愛用している。コンソール再現プラグインは音を派手に変えるので慎重に選ぶ必要があるが、個人的に、一旦SSLでフィニッシュな感じがある。SSLでまとめあげて、マスタリングでShadowhills→Ozone→ATR102と進めるのが最近の私のワークフローだ。半年前の「HOME STUDIO」の時ともうだいぶ変わっているから、また動画を撮らなければ。

 

本当に、ユニバーサルオーディオはすごい。ギターについても同様の感想を抱いており、去年UAFXペダルの「Ruby」を買ってから歪みペダルを買わなくなった。あ、自分が出すべき音はこれだ、とコード一発で納得した。ありがたいことに、ライブでのギターの音を褒めていただけることが多い。ライン出力と言うと驚かれる。「アンプにマイクを立てるのこそが至高」と必ずしも言えない時代になったとしみじみ感じる。アンプを所有できない賃貸暮らしの私には願ってもない技術革新である。一昔前までラインのギターなんてペラペラでとても使えなかったけど、最近は積極的にラインを選択できるようになってきた。DTMのアンプシミュレータ界隈も同様で、今回のUAFXペダルのプラグイン化はギターのライン録り文化にさらなる拍車をかけるだろう。

 

そして「Topline Vocal Suite」。これも素晴らしかった。が、しかし、クローズドなブログだから書くけれど、私はたぶん使わない。なぜなら、私はこの製品の想定ユーザーではないと感じたからだ。私には11年かけて培ってきた「月岡彦穂の声向けのボーカルミックス技法」が確立しつつあり、「Topline Vocal Suite」を使わずともそれを使えば良いのだ。決して「Topline Vocal Suite」がダメな製品と言いたいわけではなく、スタイルが確立した私のようなユーザーにはnot for youだろう、という意味で、私はたぶん使わない。

「Topline Vocal Suite」は、徹頭徹尾DTM初心者向けの製品だと感じた。例えば、歌ってみたを始めたい人、バンドのデモ音源を作りたい人など、DTMを始めたばかりで右も左も分からない人たちにとって、「Topline Vocal Suite」は大きな灯台となるだろう。

 

昔から言い続けているが、ミックスなんてものは本来時短できるならした方がいいのだ。だって私たちDTMユーザーの本懐はミックスではなく作曲だから。コンプの設定を迷っているくらいなら、その時間で歌の練習をしたり、新しいコードを鳴らしてみたりした方が良い。その方が作曲スキルは向上するし、結果として音楽も良くなるに決まっている。だからミックスは極力楽をするのがいい。

「Topline Vocal Suite」はそこを狙ったのだと思う。”煩雑なボーカルミックスは俺に任せて、きみは肝心要の作曲に集中してくれよな!”という、ユニバーサルオーディオからのメッセージを強く感じた。この思想に私は深く賛同する。AI然り、DTM初心者がミックスを学ばずにある程度のミックスができる未来も、案外すぐそこまで来ているのかもしれない。YouTubeも最近はミックス解説よりコード進行解説の方が伸びるし、みんなが作曲の本質に興味を抱き始めている、というか、ミックスはまぁ別になんとかなるよね、という全体的な空気を感じるようになってきた。いい音にしたいと悩む人よりも、いい音を見つけたいと悩む人の方が多い感覚。私はそれはとてもいい流れだと思う。ミックスがなんとかなる世界は、DTM初心者、ひいては音楽業界全体にとって圧倒的に「やさしい」と思うから。

とはいえ、「ミックスの勉強」が完全に不要になる未来は、まず来ないと思う。ミックスを学ぶことで得られる音楽的知見は星の数ほどあるからだ。帯域の”棲み分け”の概念、楽器ごとの”フレーズチョイス”のセンス、音楽を聴いたときに”聞こえなかった音”が聞こえるようになったり、数えきれないほどの知見を私はミックスから学ばせてもらった。DTMを始める前と今とでは、両耳の細胞が全部生まれ変わっている気がする。

この感覚とメソッドは後世に残していきたい。だから私は今後もミックス関連の動画を作り続けるし、自分の曲は自分でミックスする。ミックスが過去の異物になることはない。ミックスを勉強した人としてない人とでは、前者の音楽の方がおもしろいに決まっているのだ。

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