嘘も方便なボカロの世界

こんにちは!ゼロカラカンパニーの月岡です。
ゼロカラシティにご参加いただきありがとうございます。

このコラムは、ゼロカラシティのメンバー限定コンテンツです。内容はメンバー以外に漏らすことのないようお願いします。

 

さて、今回のテーマは「嘘も方便なボカロの世界」です。

ボカロPになりました

先日動画をアップしましたが、私月岡、ボカロPになりました。

 

この動画の中で私は、「知声ちゃんを使ってボカロPになります!」と言いましたが、この発言が「間違っている」と、コメント欄が荒れに荒れていました。

 

知声はボカロじゃないですよ。

 

え?

 

どういうこと?

 

 

 

この見た目でボカロじゃないの???

 

 

…さあ、みなさん、これ、知ってましたか?

 

YAMAHAが作った音声合成ソフト”のみ”を「ボカロ」と呼ぶ。

「ボカロ」は「音声合成ソフト」の中のひとつであり、全体を指す言葉ではない。

 

 

え???そうなの????????

 

 

目から鱗が落ちました。恥ずかしながら私、DTM講師を仕事にしていながら、その事実を知りませんでした。

コメント欄はこう続きます。

世間一般には「ボカロ」という言葉の意味が間違って認識されているので、月岡さんには正しい言葉使いをしてほしいです。そして正しい言葉使いを広めてほしいです

勉強になりました

まずは謝罪させてください。「ボカロ」という言葉を間違って使ってしまい、申し訳ございませんでした。

 

その上でここからは、少し言い訳めいてしまうかもしれませんが、「これから”ボカロ”という言葉をどう使っていくべきか?」について議論していきます。

まずは状況を整理しましょう。

 

  • 世間が「ボカロ」だと思っているものは「ボカロ」ではなく「音声合成ソフト」
  • コメント欄の人達の目的は、「ボカロという言葉を世間に正しく知ってもらうこと」

 

この状況で、月岡にできることは何でしょうか?

さあ、結論から言います。そしてこれは意外な結論です。

 

「私はYouTubeで、”ボカロ”という言葉を正しく使わない」

 

これが、私がベストだと思う選択です。

なぜ間違って使うの?

すみません、先の結論は、キャッチーさを優先するあまり端折って書いておりましたので、もう少し正確に書きます。

 

「私がYouTubeで”ボカロ”という言葉を使うときは、タイトルとサムネではあえて間違えて使い、動画の中では正しく使う」

 

これが、私の選択です。

 

なんで?言葉は正しく使ったほうがいいに決まってんだろ!ふざけるな!!

 

という声が聞こえますが、それでは目的である「世間に”ボカロ”という言葉を正しく伝える」願いは達成されないでしょう。

その理由を、これから解説していきます。

 

 

まず前提として、世の中には2種類の人間がいます。

“ボカロ”という言葉を正しく使っている人

“ボカロ”という言葉を間違って使っている人

そして我々の目的は、「世間に”ボカロ”という言葉を正しく伝える」です。

つまり、②の人口を減らし、①の人口を増やすことが目的です。…ここまではよろしいでしょうか?

 

目的達成のためには、②の人達に「ねえ知ってる?ボカロってYAMAHA製品のことで、全体のことではないんだよ?」と伝えればOKです。

では、彼らに「ねえ知ってる?」をYouTubeで伝えるためには、どのような手順を踏めば良いでしょうか?

答えは、こうです。

 

  1. ②の人達を動画にたくさん集める。
  2. 動画の中で「ねえ知ってる?」と言う。

 

とてもシンプルですね。シンプルですが非常に奥が深い構造となっており、特に注目すべきはファーストステップである「集める」です。

先ほど世の中には2種類の人間がいると書きました。②の人類は、以下の2つにさらに細かく分けることができます。

 

⑴ “ボカロ”を間違って使っており、かつ、ボカロに興味がある人

⑵ “ボカロ”を間違って使っており、かつ、ボカロに興味がない人

 

⑴は例えば先週までの私で、⑵は例えば私の母親です。”教員一筋数十年”のうちの母親は現代音楽に疎く、直接聞いたことはありませんが、きっとボカロなんて知らないでしょう。ニコニコ動画のこともきっと知りません。初めてスマホを買ったのは去年の夏で、YouTubeの存在すらも最近知ったらしいです。(息子はインターネットで悪いことをしてお金を集めていると思っていたようです。笑)

うちの母親に「ねえ知ってる?ボカロってYAMAHA製品のことで、全体のことではないんだよ?」と伝えたところで「はあ…?」でしょう。だってボカロをそもそも知らないし、興味もないんですから。「難しい言葉を使って、なんだか怖いわ。近づかないようにしましょう。」とすら思われるかもしれません。

これはみなさんに「ねえ知ってる?朝の筋分解を防ぐためには、なるべく早く筋肉に栄養を行き渡らせるためにプロテインよりもEAAの方が良いんだよ?」と言って「はあ…?」と言われるのと同じです。筋トレ好きの人は「へえ〜〜〜!そうなんだ!」となりますが、筋トレに興味のない方にとっては、右耳から左耳に通り抜けていく文章ですよね。

 

つまり、私が相手にすべきは、⑴の人達というわけです。⑵の人達は無視してOKです。

 

では、⑴の人たちを、どうすれば動画に集めることができるでしょうか?

 

もう答えは出ています。人を集めるには、その人の興味のあるコンテンツを提供することです。 「”ボカロ”を間違って使っており、ボカロに興味がある人」が興味があるのは、もちろん「ボカロ」です。

今書いた「ボカロ」は「間違ったボカロ」ですが、彼らにコンテンツを届けたいならば、彼らの言葉で届けてやるべきです。

「正しい言葉使いじゃなきゃダメなんだ!!!」と頑固になって、動画のタイトルを「合成音声ソフトPデビューします!」とか「VoiSona Pデビューします!」にしてしまったら、そこに来るのは①の「”ボカロ”を正しく使っている人」です。彼らに「ねえ知ってる?」をしても釈迦に説法ですから、これは集客に失敗しています。

目的から逆算すると、どう考えても「ボカロPデビューします!」が正解なんです。

 

目的を達成するためには、少しくらいの嘘は方便です。最後にきちんと情報を修正してやればいいのです。

 

タイトルとサムネでは、間違った用法で「ボカロ」を使う。そうすると⑴の人たちが「お?ボカロの動画だ!」と集まってきます。そして集めたところで「ねえ知ってる?」をやれば、「へえ〜〜〜〜〜!そうだったんだ!!!」となります。そうすることで初めて、⑴の人たちは①へ進化します。

「戦略的な嘘」をつけないと、届けたい人にコンテンツが届きません。これが今回の「ボカロ騒動」で、私が学ばせていただいたことです。

 

「嘘も方便」構造は身近にもある

この「入口は世間認知に合わせた嘘、中身でしっかり真実を伝える」という構造は、実はみなさんの近くにも存在します。

そう、携帯会社が使う「ギガ」という言葉です。

 

いま契約すれば20ギガをプレゼント!

 

という宣伝文句、言葉としては間違っていますよね。

だって正確には、

 

いま契約すれば20ギガバイトのデータ容量をプレゼント!

 

なのですから。

プレゼントされるのは「ギガ」ではなく「データ容量」で、「ギガ」はただの、10の9乗を表す接頭辞でしかありません。単位そのものですらありませんから、「ギガをプレゼント」がいかに可笑しな言葉遣いか、お分かりいただけるかと思います。

 

しかし、世間一般には、「ギガ」があたかも「データ容量」そのものであるかのように広まっています。

…で、あれば、携帯会社のとるべき戦略は「世間認知に合わせて”ギガ”という言葉を間違って使う」ことなのではないでしょうか?

 

そして、「ギガ」で集めた人達に「厳密にはギガじゃなくてデータ容量なんですけどね〜」と教えてあげればいいのです。「ギガ」で集めないと彼らは寄ってこないので、そもそも「ねえ知ってる?」が出来ないし、携帯会社のビジネスは一部の知識人ではなく大衆に向けたもの、おじいちゃんやおばあちゃんにも伝わらなければなりませんから、意固地に「データ容量」なんて言葉を使っていては会社が潰れてしまうかもしれません。

 

「ボカロ」も「ギガ」も「ホッチキス」も「ピアニカ」もそうです。この構造は色々なマーケティングに応用できるため、学んでおいて損はないと思います!

 

では、来週もお楽しみに!

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