広告に1,000万円かけた男

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広告に1,000万円かけた男

先日、知り合いの経営者と飲みに行った。

年下ながらも、自ら立ち上げた会社で10人以上の社員を抱える敏腕社長である彼(Aくんとする)は、次なる野望をエンタメ業界に見出していた。YouTubeを主軸とした音楽ビジネスがやりたいらしく、チャンネルを開設し、1本目の動画をもうすぐアップするのだと楽しそうに話していた。かなり気合を入れて作ったというその動画を見せてもらうと、なるほど確かにクオリティはとても高く、しっかりとプロの手が入った作品という印象を受けた。実際、数十万円かけて外注したのだと言っていた。

しかし、残念ながらYouTubeは「クオリティが高ければ必ず伸びる」という場所ではない。どんなに手間暇かけて作った動画でも、アルゴリズムにハマらなければ100回再生すらされず、手間暇分の大赤字を垂れ流すことになる。Aくんが見せてくれた動画は確かに素晴らしかったが、新しいチャンネルの1本目の動画なんて、基本、つんつるてんに滑るものだ。これはもはやYouTubeの「あるある」と言ってもいい。(どことは言わないけど、音楽機材を作っている”あの会社”のチャンネルとかね……)

そういった残念な事例を私はごまんと知っているので、飲み屋でAくんの渾身の動画を見たときは、「YouTubeってそんなに甘いもんじゃないけどなー」と腹の底では思っていた。

 

Aくんの、この一言を聞くまでは。

 

「俺、本気なんで、この動画に広告費1,000万出そうと思ってるんすよ」

 

自分の耳を疑った。彼はこう続けた。

 

「ただ出すだけじゃ伸びないのは分かってるんで、広告ぶん回してまずはとにかく露出を増やします」

 

知らない人のために説明すると、すべてのYouTube動画には「広告」をつけることができる。Google(YouTubeの運営元)にお金を払えば、払った金額に比例してYouTubeでの露出を増やしてくれるのだ。みなさんもホーム画面や関連動画に見慣れない動画が出てきたり、動画再生時に別の動画が5秒間再生されたことが何度もあると思う。まさにそれが「広告」だ。(ちなみに、Google全体で一番売上が高い部門は「広告」らしい)

もちろん少額投資では効果は薄い。高額投資すればするほど高い効果が見込める完全なるマネーゲームだ。実は私も広告を出したことがあり、そのときは6万円を投資した。無論、Googleから見たら「カス」である。

 

私は6万円しか出せなかったが、Aくんは1,000万円出すという。私からしたら目の周りそうな金額だが、彼の普段の仕事ぶりを見ていると、会社にお金があるのはなんとなく分かるし、私にとっての6万円が、彼にとっての1,000万円なのだろう。さすが10人以上雇っているだけある。(正社員を1人雇うと最低でも年間300万円以上の経費がかかる)

私は、彼の話を聞いてすごくワクワクした。自分では絶対に取れないデータが取れるからだ。「広告に1,000万円かけたら動画はどれだけ伸びるのか」を私は見ることができる。しかも無料で。YouTuberとしてこんなに有意義なデータはない。

 

そして現在。飲み会からしばらく経った。動画は3日前に公開されている。

気になる再生回数は……

 

 

9万回、だった。

 

 

3日で9万回ということは、単純計算で「1ヶ月で90万回」は再生される見込みだ。これが1,000万円のパワーらしい。

 

みなさんはこの数字をどう思うだろうか。

私は全然「アリ」だと思った。YouTubeで動画を90万回再生させることには、絶対に1,000万円の価値がある。

 

ただし、どんな動画でも広告を出す価値があるわけではない。1,000万円出す価値のある動画と、そうでない動画は明確に分かれている。

 

その境目は「期待値計算」で求められる。「その動画は1,000万円かけて1,000万円以上を回収できるか?」を計算し、できるなら価値あり、できなければ価値なしだ。

 

なんでもない普段の動画が90万回再生されても、それはただの「バズ」として処理され、そこから売り上げが伸びることはない。例えばゼロカラカンパニーが一昨日公開した「ギターの音作り全部見せます」動画には、1,000万円を投資する価値はない。もちろんバズを起点に登録者は伸び、一時的に全動画の再生回数も伸びるだろうが、1,000万円の回収はこの動画がいくら伸びたところで難しいだろう。

 

しかし、ゼロカラカンパニーには明確に「1,000万円を投資する価値のある動画」が存在する。

それは「ゼロカラコンピの募集要項動画」だ。

 

なぜなら、この動画が再生されることは、そのまま「ゼロカラコンピの参加者増」に直結するからだ。

 

ではここで、期待値計算をしてみよう。

厳しめに見積もって「100人が再生したら1人が参加する」と仮定する。すると、90万回再生で、

90万÷100=9,000人

が参加する。

参加費は最低でも2,500円なので、売上は、

2,500円×9,000人=2,250万円

となり、

売上2,250万円−広告費1,000万円=利益1,250万円

このように、1,250万円の利益(プラス)が発生する。運営スタッフを100人増員してもお釣りがくるほどの圧倒的な利益だ。

しかも、実際は100人に1人よりも参加率は高いだろうし、アドバイスを希望する人の参加費は500円上がるので、利益はもっと出るだろう。

 

このように、期待値計算をすることで、「その動画に1,000万円を投資する価値があるか否か」は明確に判断できる。(全然関係ないけど、実は高校数学の授業で期待値計算は全員やっている。元々数学の講師をやっていたからこそ言いたい。数学は大事なんですよ……)

 

しかし、絶対に利益が出るにも関わらず、私はゼロカラコンピの募集要項動画に1,000万円の広告をつけていない。

なぜか?

1,000万円持ってないからだ。シンプルな資本力不足である。

 

Aくんは敏腕経営者なので当然期待値計算はしただろうし、その結果、この投資は高確率で成功するとわかったはずだ。ここまでは私にもできるが、彼には投資を実行するだけの資本力もあった。だから実際に1,000万円を投資した。文章にするとあまりにもシンプルだ。

実は、私たちも普段の生活の中で無意識に期待値計算をしている。例えばネットフリックスを契約している人は、月会費に見合う数の作品を見ているかを大なり小なり考えているはずだし、引越しで家賃を考えるときには、現在の収入と照らし合わせて上限額を決めているはずだ。

 

もしここまで読んで、「お金で再生回数を稼ぐなんてズルい」と思った人がいたら、それは間違っている。Aくんは何もズルくない。ただただ、私たちが日々やっている期待値計算を法人の規模感でやっているだけだ。

金額のケタが違うだけで思考論理は私たちと何も変わらない。私たちが「10,000円でCDを作れば、1,500円で10枚売れて15,000円の売上が見込める」と考えているとき、Aくんは「1,000万円広告費を出せば、×××が⚪︎⚪︎⚪︎個売れて1,500万円の売上が見込める」と考えているのだ。

 

これはもうはっきり書くけど、私だって、今1,000万円持っていたら迷わず広告費として出す。広告をぶん回してゼロカラコンピの参加者を増やし、私の夢である「ゼロカラコンピをDTMerの文化にする」に一気に近づく。お金で解決できるならぜひそうしたい。私は夢を叶えたい。しかし、私の銀行口座には肝心の1,000万円が入っていない。

私にそれができなくてAくんにできるのは、ただ純粋に資本力の差だ。私はしがないフリーランス、彼は10人以上の従業員を抱える社長。積み上げてきたものが違うのだ。私より彼の方が「稼ぐ能力」が高いから、大きな金額を使って大きな金額を呼び込める。ただそれだけ。もう本当に、笑っちゃうくらい資本主義だ。

むしろ単純明快でいいじゃないか。Aくんは資本主義社会で真面目に頑張ったから、人より大きなチャレンジができる。私はそんな彼のことを年下だが素直に尊敬している。

 

私ももっと稼ぎたい。Aくんと話して強くそう思った。お金で何でも買えるわけじゃないけど、お金があれば叶えられる類の夢もあるのだと気付かされたから。そして意外とエンタメは「そっち側」なのかもしれないとわかってきたから。

そう考えると、『突然現れて大人気になったYouTubeチャンネルのバックには実は大企業がついていた』という事例に対して、私はもう「広告費かけたんだろうなー」という目で見てしまう。名前は伏せますが”一発録りが売りのあのチャンネル”とかね……。今まで動画に広告費をいくらかけたのか、その総額はきっと、一般男性100人分の生涯収入くらいはあるのだろう。

この事実を肯定しようにも否定しようにも、そういう世界に今私たちは生きている。それを痛感させられた有意義な飲み会だったので、今日はブログに書かせてもらいました。また来週!

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