くるりのライブ

こんにちは!ゼロカラカンパニーの月岡です。
ゼロカラシティにご参加いただきありがとうございます。

このコラムはメンバー限定コンテンツです。
内容は外部に漏らすことのないようお願いします。

マスタリングテープの動画

UADプラグインから新しく「Ampex ATR-102 Mastering Tape Recorder」がネイティブ化した。

個人的に、今まで紹介してきたプラグインの中で一番取り扱いが難しかった。なんせ音の変化が地味なのだ。正直iPhoneのスピーカーで私が聴いても違いがわからないと思う。ヘッドホンやモニタースピーカーで聴き比べばかろうじてわかるかな、ってレベル。それくらい「微細」な変化をサウンドに与えるプラグインだったので、動画でどう取り上げるか結構悩んで、この動画は制作にかなり時間がかかった。

が、結局は自分が感じた印象をそのまま話すのが誠実であり、視聴者も忖度されたコメントは見たくないだろうと思ったので、この感じの動画になった。決してネガティブなことは言わないが、すごい!革命!神プラグイン!と絶賛することもない。こういうプラグインがありますよ、よかったらチェックしてみてね、という非常に平熱なテンション感の動画になった。

とはいえ、「地味」という評価は私にとって決して悪いものではない。「地味なサウンド」とは言い換えれば「謙虚なアプローチ」ということで、地のマスタリングへの「リスペクト」が高いと解釈することもできるからだ。実際、このマスタリングテープは30年以上も第一線のレコスタで使用され続けており、それはひとえにこのマシンが「いい仕事」をするからだと思う。第一線のレコスタにおける「いい仕事」とはすなわち「素材の良さを活かす」ことであり、その観点で見るとこのマシンは最高だ。これは本当に心の底から感じた。月岡彦穂のマスタリングを一切崩すことなく、ちょい足しでナイスな仕事をしてくれる仕事ぶりが非常に好ましく、だからこそ動画の最後に「新曲で使いたい」と言った。もちろん100%の本音で。

残念ながら、ほとんどの人には「???」な動画だったと思う。音変わった?と思った人が多かったはずだ。でも私はいいなと思った。そして、私と近い感性の人はきっと同じく「いいな」あるいは「なんかいいかも?」くらいには思ってくれたはずで、そういうニッチなコンテンツを胸張ってYouTubeに出せたことを誇りに思っている。これが私の仕事だ。そもそもがニッチな「DTM」という狭い業界の、生音録音というさらにニッチな分野で私は戦っている。YouTuberは「共感」を得てなんぼだ。今の私は100万人の共感を得ることはできないけど、1000人くらいは「おお!これこれ!」と言わせる自信はある。狭い世界の狭い分野で、今日も頑張って生きていきます。

くるりのライブ

「くるり」というバンドが好きだ。

純粋な曲の良さだけでも飛び抜けているのに、演奏がまあとんでもなくうまい。現在はギターボーカルとベースコーラスの二人が正規メンバーで、ドラムとキーボードとリードギターがサポートメンバーとなっており、それゆえライブでは音源をめちゃくちゃアレンジして演奏することも多い。そのアティチュードも好きだ。メンバーはサポート含め全員が強烈な「歌心」を持っており、どんなに複雑なハーモニーやリズムを奏でていても「歌」へのリスペクトを常に忘れていない。バンド全体のグルーブも凄まじく、音がひとつになって飛んでくるのに全部の楽器がよく聞こえる。

とにかく私はくるりが好きなのだ。音源も好きだけど、ライブはもっと好きなのだ。

一昨日見たライブも最高だった。3回泣いた。普通1回だと思うけど3回だ。原因は3回とも「曲が良すぎた」からだ。私はあまりにも完成度の高い音楽を聴くと泣いてしまう。滅多にそんなことはないが、くるりの曲では頻出する。一昨日のライブでは”ロックンロール”と”ワールドエンドスーパーノヴァ”と”奇跡”で泣いた。よかったらサブスクで聴いてほしい。ライブはそれの五千倍いい。全部めちゃくちゃアレンジされてるし。

あんな感じで音楽を奏でられたら、どれだけ幸せだろうと思う。くるりは90〜00年代が全盛期と言われがちだが、別に10年代以降も「人気がなくなった」わけではない。くるりはずっとくるりのままで、そしてずっと人気だ。しかも当時のファンだけでなく、若い人たちからもずっと人気だ(実際、私がくるりにハマったのは2018年から)。

くるりはアルバムごとにメンバーが変わり、曲調が変わり、サウンドも変わる。しかしどの作品も完成度は異常に高く、根底には「音楽への造形の深さ・愛・熱狂」がある。彼らはブレることなく、最初からずっと音楽をただ楽しんでいるだけだ。だからこそ、くるりはよく「Musician’s Musician(ミュージシャンが憧れるミュージシャン の意)」と評される。本当にその通りだと思う。ああやって自分たちが「今やりたい」音楽で純粋なファンを集めて、30年近くも現役でライブし続けるのは尋常ではない。セルアウトすることもなく、失速することもなく、いつだってマイペースで一定の人気を博し続けている。私だけでなく、ミュージシャンなら誰もが「ああなりたい」と思って当然のバンドだ。

DTMerの目線になると、くるりは録音芸術としてもとんでもない境地に達していると思う。”その線は水平線”のミックスが特に私は好きで、どうやったらあんなに素晴らしい音をパッケージできるのか、自分もいつかあんな音で演ってみたいと心から思っている。(余談だが、”その線は水平線”が収録されているアルバム”ソングライン”は、サウンドだけでなく楽曲群も私は大好きで、くるりで一番好きなアルバムを聞かれたらこれを答えている)

いつか叶うならくるりと同じステージに立ってみたいと思う。フェスとか、あるいは未来で私が行う対バンイベントとか。バンド頑張ったらいつか会えると信じているし、バンドにはそういう夢があると思っているから。死ぬまでに絶対、くるりと音楽で対話してみたい。すごく遠い場所に彼らはいるけれど、長い人生の中で一瞬でも背中が見えるように頑張って音楽を続けて行きたい。くるりのライブは本当に最高でした。自分ももっとライブ頑張ります。いま、次の準備してますので!

PAGE TOP