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京都の音楽フェス
京都へフェスを見に行ってきた。
「くるり」という大好きなバンドが主催するフェスで、名を「京都音楽博覧会」。目当てのバンドは「くるり」と「KIRINJI」と「羊文学」だったが、それ以外の初見のミュージシャンも皆素晴らしく、すっかり全員のことを好きになってしまった。
知らない音楽に出会えるのは気分がいい。フェスっていいなとしみじみ思った。
私には、ライブを見るとその規模感に関わらず「自分があそこに立っていたら」と考えるクセがある。自分だったらどんなセトリで、どんなサウンドで、どんな歌を歌うだろう。初めて自分を見るお客さんが大半のステージで、30分で何を残せるだろう。MCは何を喋り、当日までの告知はどんな感じで、終わった後の挨拶は誰に何を言って、などと空想してしまい、ライブ中に集中できない瞬間がないと言えば嘘になる。中学生みたいだな自分、と思う。バトルアニメを見て主人公と自分を重ね合わせるような、そんな妄想癖がこの歳になっても消えずに残ってしまった。でも、楽しいからやめようとは思わない。
音楽の幅が広い「くるり」の主催するフェスだけあって、出演者の音楽ジャンルは非常に幅広く、ポップスからエレクトロ、果ては海外のセッションバンドまで様々なグループが音楽を奏でる1日だった。「KIRINJI」のギターと「羊文学」のギターと「くるり」のギターは(全部バッキングの話)、極端な表現をすれば同じ楽器とは思えないくらい音が違くて、これら全部に「エレキギター」という同じ名前がついていることを不思議に思った。全員同じメーカーのエレキギターを使っていてこれなのだから、本当にエレキギターとは懐が深く、奥行きのある楽器なのだと実感させられた。自分のギターに取り入れられるところ、取り入れられないところを見極めつつ、常にアップデートをしていきたい。
昔と今とでバッキングギターの音の好みは大きく変わった。色々とあるが、端的に言えば好む歪みの量が減っている。歪みとは、ギターを弾いたときジャキーンと鳴るざらざらした成分のことだ。エレキギターといえばで思い浮かべるあの音。昔は、ギターの輪郭が消えて音の壁に聞こえるようなハイゲインが好きだったが、今はコードが1音1音見えるローゲインが好きだ。聴く音楽の嗜好の変化もあるけれど、たぶん自分の楽曲で使われるコードが複雑になっていることが大きな原因だと思う。例えば「Life Is Ours」のCメロとか、「ロックスター」のサビとか、ああいったバッキングでギターを歪ませすぎてしまうとせっかくのテンションコードやオンコードが見えなくなり、楽曲の魅力が激減してしまう。それから、うちのバンドはリードギターが鬼のように音を歪ませているので、私までゴリッと歪ませるとそれこそ何が何だかわからなくなってしまう。
今回行ったフェスでも、スリーピースバンドとフォーピース以上のバンドとではバッキングギターの音は全くの別物だった。ギターが2本になると、バッキングギターはよりバッキング然とした音、つまり、ミドルが凹んで高音が持ち上がったローゲインな音になり、音量も落ち着き、単体では少し寂しいくらいのサウンドになる。リードギターと合わさったときに理想のサウンドになるようにデザインされているのだろう。そんなことは昔からわかっていたつもりだったが、色々なバンドを1日で見られるフェスではより顕著にそれが感じられた。
バンドの数だけ音作りがあるが、それらは完全に自由ではなく、あるロジックに基づいて行われている。そしてそのロジックすらもひとつではなく、音楽ジャンルや会場の大きさ、楽曲の方向性やボーカルの声質など様々な要因によって変化する。例えば、美しいファルセットを持つボーカルと細かいリズムグルーブが特徴の「KIRINJI」のサウンドは、ずっしりと重心が低くタイトに締まった設計。伸びやかな中音域を持つボーカルとオーガニックなアレンジが特徴の「くるり」のサウンドは、全楽器を聞かせつつも歌の場所を空けたドンシャリめな設計。シンプルでポップで奥行きのあるスリーピース女性ボーカルバンド「羊文学」のサウンドは、女声の低域を補うかのような轟音ギターとブリブリのベース、その上で美声がスコンと抜けてくる設計だった。どのバンドも本当に最高の音だった。
私のバンドならどうだろう。私の楽曲はサビの爆発力とコーラスの分厚さに特徴がある(つもりで作っている)ので、それを活かした音作りが必要だ。まず、歌をしっかり聞かせるためにバンドは轟音ではいけない。ギターもベースも、少し物足りないくらいの音量でいい。叫ぶような曲はほとんどないし。それから、私の声が抜けてくるハイミッド帯域は空けておくべきだ。700~1kHzあたりはボーカルに譲ってほしい。しかし、だからと言ってギターの音が薄いのは良くない。サビのストップアンドゴーでインパクトを出すために、ある程度の歪みも必要だ。クリーンサウンドは合わない。かといって、複雑なコードの響きがボケてしまうようなハイゲインもいけない。そう考えると、メロディ担当のリードギターはしっかりと歪ませ、コード担当のリズムギターは薄く歪ませる今の棲み分けは間違ってないのかもしれない。ベースにはギターとも歌とも喧嘩しないように低音に集中してもらい、リズムギターと合わせてコードの響きを作ってもらう。私のが曲はそんなにベースが目立つ必要はない。リズムギターの存在しない7弦目の役割というとイメージに近いかもしれない。ドラムは…こちらでできる音作りはあまりないので、グルーブメイクに全集中してもらうのがいいだろう。強いていうなら、ドラマーのコーラスはとても美しいのでもっとライブで音量を上げたいところだ。
バンドは楽しい。試したいことが山ほどある。改善したいことが山ほどある。まだまだ上手くなれる気がする。次の練習が待ちきれない。そして当然、次のライブも待ちきれない。