もうひとつのバンド

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もうひとつのバンド

月末に東京に行くことになった。

DTM界隈の人たちと会うのが主な目的だが、ふとしたきっかけから、大学時代の友人らと会うことになった。私のかつてのバンドメンバーだ。

大学時代にバンド活動をしていた話は何度かしたことがあるけど、実は私は2つのバンドを組んでいた。1つは私が作詞作曲してライブをガンガンやっていたバンドで、7年前にワンマンライブをやって解散した(ライブのMCで話した「7年前ぶりのバンドワンマンです」とはこれのこと)。そのバンドが解散した後、気の置けない友人らと趣味でゆるく組んでいたバンドがあって、今度会うのはそっちのメンバーだ。

 

ワンマンライブをしたバンドは大学4年生の終わりに解散したのだが、私は留年が決まっており、あと一年のモラトリアムを謳歌できることになっていた。そこで同じく留年が決まっていた同期の友人A(彼は個人で弾き語りライブに励みつつもバンドへの強い憧れがあった)と、「ラスト一年だけ一緒にバンドやってみない?」という話になり、ベースとドラムができる後輩2人を巻き込んで、私と友人Aを”ダブルフロントマン”とする珍しい4人組バンドが結成された。名は「あしぶみでゅえっと」。大学生のしょうもない悪ノリだ。

あしぶみでゅえっとの活動方針は、「私と友人Aのソロ曲をバンドでやってみよう」だった。バンド結成時、私はちょうど1stアルバム「ほんとうのこと」の制作中で、一部の楽曲、例えば「音楽が好きだ」の弾き語りは既にあったので、それをバンドアレンジしてみようということになった。だから実は、「ほんとうのこと」に収録されている「音楽が好きだ」はあしぶみでゅえっとのアレンジを私がCubaseで打ち込んだものだ。ちなみに、2ndアルバム「YOUNG」に収録された「まだ」もそう。

「ふたりの曲をバンドで」という方針はあったものの、蓋を開けてみれば友人Aが曲を持ってくることが多かった。4人で演奏した私の曲は「音楽が好きだ」と「まだ」だけ。直前までバンドを組んでいた私と違い、友人Aはバンドへの渇望が溜まっていたのだろう。どんどん曲を持ってきてはアレンジを欲した。私の曲は友人Aがリードギターを、友人Aの曲は私がリードギターを弾くスタイルだったのだが、友人Aの高いソングライティング力のおかげで、リードギターを考えるのはとても楽しく、バンドでギターを弾く楽しさを知れたのはあしぶみでゅえっとのおかげだ。

スタジオに入って曲をアレンジしているだけで楽しかった。軽音部の定期演奏会や学祭に向けて練習し、本番が終わった後に飲むお酒が美味しかった。数ヶ月前までずっと気を張ったバンド活動をしていたので、ぬるま湯のような活動がとても心地良かったのを覚えている。モラトリアムを存分に謳歌した、わかりやすく青春と呼べる1年間だった。翌年3月、私の卒業とともにあしぶみでゅえっとは解散し、友人Aはなぜかもう一年留年した。

 

それから6年の月日が流れた。私だけは音楽にへばりつき、先月ようやくワンマンライブ「emergence」を開催することができた。実はあの日、あしぶみでゅえっとのメンバーが見にきてくれていた。ベーシストは残念ながら予定が合わなかったが、友人Aとドラマーが並んで見にきてくれており、「まだ」や「音楽が好きだ」で満面の笑顔と歌声をステージに届けてくれた(あの日はステージからお客さんの顔がよく見えた)。

終演後に3人で立ち話をしていたら、今は社会人として働く友人Aが「またバンドやりたくなったよ」と言った。私は「やったらいいんだよ」と言い、とりあえず今度飲み行こうか、なんならスタジオ入っちゃう?(笑)というノリになり、結局、思ったより遥かに早い、6月末に集まれることになった。

 

あの日のライブの感想で、「バンドやりたくなった」という声は私にとってものすごく嬉しかった。なぜなら私がバンドマンだからだ。誰かの背中を押すことができ、その人の人生がちょっとでも良くなるのなら、バンドマンとしてこれ以上の光栄はない。バンドマンは人に影響を与えてなんぼだ。最近、あの日のお客さん同士でスタジオに入っている動画をSNSで見た。嬉しくてニヤニヤしながら見せてもらった。友人Aもぜひバンドをやるべきだと思った。

社会人になると、音楽活動はいくらでも「やらない言い訳」ができる。仕事が忙しいから、お金を節約したいから、一緒に演りたい人がいないから、いても休みが合わないから、発表する機会がないから、ゆえに始めるきっかけがないから……。私は、世界からその言い訳をひとつずつ消していきたい。ゼロカラコンピはまさにそのためにやっていて、DTMer同士が出会い、曲を聴き合い、繋がっていくことを目的としている。ゼロカラコンピがもっとDTMerに浸透すれば、DTMを辞める人はもっともっと減らせるはずだ。せっかく始めたDTM、もっと広くいえば「音楽」という趣味を楽しく続けられる世界を、そんな理想郷を、私は今だって本気で作りたいのだ。

 

最近は、バンドでゼロカラコンピみたいなことができないかなと考え始めている。バンドをやりたい人をマッチングさせて、発表の機会を与えて……。探せば既にそういうサービスはあるけど、どれも流行ってるとは言い難いし、きっと何か超えられない障壁があるのだろう。でも、もしかしたらゼロカラコンピを作った私になら、その障壁は越えられるんじゃないか……そんな野望が、あの日のライブ以降むくむくと芽生えている。

そういうサービスがもっと適切な形で世の中に出回れば、友人Aをはじめとする、迷えるバンドマンをたくさん救えるはずだ。友人Aのような人はきっと全国にごまんといるだろうから。やるかどうかはわからないけど、需要のあるサービスだろうとは確信している。今度あしぶみでゅえっとのメンバーと会うときに、どんなサービスなら使いたいかを色々と聞いてみようかな。これは久しぶりに、大きなプロジェクトになるかもしれない。

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