ヘタクソな勧誘をするな

こんにちは!ゼロカラカンパニーの月岡です。
ゼロカラシティにご参加いただきありがとうございます。

このコラムは、ゼロカラシティのメンバー限定コンテンツです。内容はメンバー以外に漏らすことのないようお願いします。

 

さて、今回のテーマは『ヘタクソな勧誘をするな』です。

 

ライブ来てください!

 

※今日の記事は試験的にですます調を封印してみます。読みやすくなることを願って。

 

音楽活動をしていると避けては通れないもの、それが勧誘だ。

特にライブ活動と勧誘は、切っても切り離せない関係だ。よほどの売れっ子でない限り、ライブをするためには人を呼ばねばならず、人を呼べなければ呼べなかった分のチケット代は自分で払うことになる。

これをチケットノルマという。アマチュアミュージシャンはライブハウスの店長から「2500円のチケットを20枚売れ。出来なかったら自腹で払え」と課されてライブを行なっているのだ。

 

アマチュアミュージシャンは、と書いたが、プロだって本質的にやっていることは変わらない。ライブする箱を押さえたら、「箱代+人件費+雑費」を収容人数で割って一人頭のチケット原価を出し、グッズ収益なども加味しながら原価に利益を上乗せしてチケット料金を決める。すると、そのチケットをさばくことがノルマになる。この計算をライブハウスがやってくれている分、アマチュアはある意味で気楽と言えるのかもしれない。

 

多くの読者と同じように、私も大学生の頃はライブをしまくっていた。週に複数本のライブがあることも多く、常に次のライブのことを考え、毎日練習をしていた。

だからノルマのしんどさはよく分かる。大学生だった私にとって、1回ライブをやるたびに1〜3万円課されるのは、毎回命懸けで博打を打っているのと同じだった。チケットが売れなかったときは、前回のライブの黒字が一気に赤字になってしまうこともあった。ライブのしすぎで家賃を滞納したこともあった。

 

初回ライブのチケットは馬鹿みたいに売れる。みんなにとって初めてだからだ。2回目もまぁまぁ売れる。初回で気に入ってくれた人達がもう1回来るからだ。しかし3回目以降が鬼門になる。「2回も見たし、もうしばらくいいかな」と考える人が多い。ライブの間隔が狭ければなおさらだ。よほどの大ファンでなければ、先週も今週も見たミュージシャンのライブを、来週も見に行こうとは思わない。

 

しかし、そんなお客さんの心理などつゆ知らず、ノルマはいつだって平等に課される。初回はあったバック(ノルマ以上のチケットを売ったときにライブハウスからもらえるボーナス)も、2回目は少なくなり、3回目は赤字になる。私もそうだったし、仲間もみんなそうだった。しかし、そこで辞めてしまうと「へぇ〜、お金がもらえなくなった途端に辞めるんですね」と軽蔑されるので、みんな唇を噛んで血と赤字を垂れ流しながらライブを続けていた。

 

ここまで「あるある」だと思う。頷いている人も多いと思う。

 

そんなわけだから、バンドマンは人を勧誘する。同じ理由で、DJも、弾き語りストも人を勧誘する。もちろん音楽だけではない。劇団員も、イベンターも、誰も彼もが人を勧誘する。

 

すべてのパフォーマーは勧誘をする。

しかし、勧誘が下手なパフォーマーのなんと多いことか。

 

ここからは、勧誘が下手な人間のパターンをいくつか紹介していく。はじめに断っておくが、これは私も昔できていなかったことであり、だから私はライブで赤字を平気で垂れ流していたのだと思う。自戒の念も込めて、この先はキーボードのタッチを強めに書いていく。

 

ある俳優志望の男から来たLINE

私の知り合いに、プロの俳優を目指している男がいる。

ゆくゆくは誰もが見るような映画の主演を努めたいという、志の高い男だ。実際、顔はいいし、声もいいし、人当たりも悪くないし、演技素人の私から見ればパフォーマンスもプロと遜色ないような気がするし、全然いけるじゃん、この人、夢叶いそうじゃんと思っていた。

 

思っていた、ということは、今は思っていないということで、それは彼が絶望的なまでに勧誘がヘタクソだったからである。

 

彼のヘタクソな勧誘文を見ていただこう。これは、実際に私に送られてきたLINEである。(モザイクを入れるのが面倒すぎて人名や講演名など一切隠していないですが悪しからず)

 

 

これのマズイところは3つある。列挙すると、

  • 何のイベントか分からない
  • 手抜き勧誘だと一瞬でわかる
  • 誘ってくる日が遅すぎる

このあたりだろうか。

 

まず「何のイベントか分からない」だが、これは致命的である。私がいきなりゼロカラシティで、

今度『THE BURNING NIGHT』ってイベントやるから来てください!

と言っているようなものである。バーニングナイトとは何か?夜にやるのはいいとして炎にまつわるイベントなのか?だとしたら炎で何をするのか?誘ってきたコイツは何役で何をするのか?行って自分にどんな得があるのか?……何ひとつわからない。何ひとつわからないイベントには、行きたくない。ホイホイ顔を出して燃やされてはごめんだ。

まぁこのイベントの場合、ポスターのセンスが無さすぎるのも問題ではある。小さく書かれた「※じゃんけん大会開催予定!!」はさすがに笑ってしまった。それのどこに引きがあると思ったんだ。

 

次に「手抜き勧誘だと一瞬でわかる」のも、絶対に避けるべきである。

基本的に、人は自分を大切にしてくれる人を大切にする。両親は自分を苦労して育ててくれたから大切だし、恋人はいつも自分を支えてくれるから大切だし、友人は自分と対等な関係でいてくれるから大切なのだ。

勧誘だって同じだ。嫌われない勧誘とは、相手を大切にしている勧誘である。

 

まず、個別メッセージなのに名前を呼ばないのは論外である。彼の文章は文頭を

「お疲れ様です!」➡︎「月岡さん、お疲れ様です!」

に変えるべきだ。これだけで大分印象が変わってくる。自分のために文字を打ってくれたと分かるからだ。

 

また、その相手だけに当てはまることも書くといい。例えば、

「25日の夜いかがですかー?」➡︎「YouTubeなどお忙しいとは思いますが、25日の夜いかがですかー?」

に変えるべきだ。こちらのことを知ってくれていると嬉しくなるからだ。

 

このたった2文を変えるだけでも、イベントに行ってみようかなと思える。しかし、明らかにコピペで送信されたメッセージには、まったく食指が動かない。人間はそんなものだ。

 

最後に、「誘ってくる日が遅すぎる」はもう基本中の基本ができていない。イベントに当月誘うのは最悪手だ。当月の予定なんて、よほどの暇人でもない限り大体決まっているものだ。社会人ならなおさらである。イベントへの勧誘は「今日飲みに行こうぜ」とは根本的に違うことを理解しなければならない。消費する精神的カロリーが桁違いなのだ。

イベントに誘うなら1ヶ月以上前。これは常識である。

 

以上が一切できていない時点で、この人が対個人のエンタメで成功することはないだろうな、と思ってしまう。

 

 

彼の勧誘ヘタクソっぷりは極まっていて、後日、こんなLINEも送られてきた。

 


 

長い。

長い上に、結局何が言いたいのかわからない。

 

要約すると、

僕の新プロジェクトのLINEオープンチャットに入ってほしい

だと思われるが、私がオープンチャットに入ることが彼にとって何の得になるのか不明瞭だし、非公開の情報を私のような部外者が誓約書なしに見られる理由もよくわからない。(おそらくプロセスエコノミーの真似事だと思うが、それにしては精度が低すぎる)

 

それに、文章内に余計な要素が多い。「ベーシックインカムシネマズ」「会社の企画」「Abemaプライム」「クラウドファンディング」は削除しても成立する。

僕が主演の映画の制作過程をLINEのオープンチャットでお見せしています。よかったら覗いてください!

でいい。相手が知らなくてもいい情報は書かないのが勧誘の定石だ。

 

情報を伝えるための文章は短ければ短いほどいい。詳細が気になったら相手から聞いてくるからだ。それまではペラペラと余計なことを書くべきではない。それはノイズにしかならない。特に「※これまでのべーシックインカムシネマズのクラウドファンディングの例」のリンクを3つも貼っているのは最悪で、ここまで来るともはや迷惑メールである。

 

 

このあたりから、私はこの人に返信するのを辞めた。時間がもったいないからである。しかし、彼からのヘタクソな勧誘は続いた。

 

 

前半、それ友達に送った文章だろ。

 

 

 

 

明日なんて空いてるわけないし、わしゃ仙台住みじゃい。

あと私の仕事のどこを見て「東北を盛り上げたい人」だと思ったのか教えてほしい。

 

 

 

まとめ

今日はヘタクソな勧誘について書いてみた。

 

じゃあ具体的にどうすればいいの?への答えは「これと逆のことをやればいい」だ。

連絡は1ヶ月以上前。相手の名前を呼び、リスペクトを忘れないこと。文章は手短にするために、余計なことを省いて本質部分だけに注力すること。

これだけでいい。しかし、これができない人の多いこと多いこと。仕方ないと思う。私もかつてそうだったから。人は失敗から学んでいくのだ。

 

最後に彼の映画の成功を願い、この記事を終わりにしようと思う。公開されたらURLを送って欲しいものだ。そのときは勝手にネタにしたお詫びとして、きちんと映画を見ることにする。

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