音楽とAIの未来

こんにちは!ゼロカラカンパニーの月岡です。
ゼロカラシティにご参加いただきありがとうございます。

このコラムは、ゼロカラシティのメンバー限定コンテンツです。内容はメンバー以外に漏らすことのないようお願いします。

 

さて、今回のテーマは「音楽とAIの未来」です。

 

脅威のAI絵描き「Midjourney」

まずはみなさん、この絵をご覧ください。

 

 

これはプロに依頼した絵でも、ゲームのスクショでもありません。

 

AIが描いた絵「日本の古い部屋」です。

 

これを描いたのは新進気鋭のAIサービス「Midjourney」です。

Discordで動かすこのAIは、誰でも気軽に始められてしかも基本無料。今世界中で大バズりしています。

 

私は美術に詳しくありませんが、この絵が自分に到底描けないとは容易にわかります。また、何より「かっこいい!」と素直に思います。

 

では、もう一枚描いてもらいましょう。

 

 

こちらはAIが描いた「ピカソが描いたエレキギター」です。

AIであることを隠して「ピカソが本当に描いた」と素人に言っても、通用する気がしませんか?

 

AIアートは、もうここまで来ているのです。

 

何がすごいって、この絵は、美術の教養ゼロの私が、1分で作れてしまったということです。

AIアートはほとんどの人にとって「新しい遊び」です。でも、遊びのクオリティが、簡単に、誰でも、すぐにプロに追いつき、ときには追い越してしまうのです。

 

プロの仕事が奪われる

そうなると、プロのイラストレーターの仕事がAIに奪われることは、想像に難くないはずです。

みなさんがアルバムのジャケットを作りたいとしましょう。今までは身近な、あるいはネットで見つけたプロのイラストレーターさんに数千円〜数万円を払って依頼し、1ヶ月後くらいにようやく納品されていましたね。
あるいは、自分で作っていた方も少なくないはずです。私がそうです。予算をケチって、Adobe的ソフトを使ってちまちま作っていました。

 

しかし、Midjourneyの登場によって、これよりもっと「合理的」な選択肢が生まれてしまいました。

 

まず、イラストレーターを探す必要はありません。ポートフォリオを見比べて好きな画風の人を探さずとも、Midjourneyに「〜〜風の」とか「〜〜のような」とか言えばOKです。

そして、納品までの時間はたったの1分です。…1分ですよ?60秒で作品が納品されるのです。
しかも、気に入らなかったら無料で書き直してくれますし、その書き直しもやはり1分でやってくれます。

さらには、依頼料だって格安です。好きなだけワガママを言えて、修正も無限回できて、1分で完成品を見せてくれるイラストレーター。彼に払う報酬は、なんと月10ドルです。
月給1400円ほどで、自分専用の24時間勤務イラストレーターを雇えるのです(しかもいつでも解雇でき、保険に入れてやる必要もありません)。

 

…どうですか?AIアート、今回はMidjourneyですが、その脅威が伝わりましたか?

 

このニュースは我々DTMerにとってはハッピーなニュースかもしれません。なぜなら、ジャケット、ロゴ、アイコン、キャラクターなど、音楽をやっていると避けては通れない「デザイン」の領域を、格安で外注できるからです。

実際、私はMidjourneyを大喜びで使っています。ゼロカラコンピのジャケットは毎回私がせっせと作っているのですが、恥ずかしながら私は美術のセンスが皆無でして、中学の美術の成績は5段階で「2」をとったこともあります。
そんな私ですから、正直、ゼロカラコンピのジャケットを作る仕事は憂鬱でした。得意領域ではない仕事は、できればしたくありませんからね。でも、外注して好みじゃないデザインが来て、書き直しを依頼して発売日に間に合わない!みたいな事故のリスクを恐れて、やっぱり自分でやるか…と渋々やっていたこの仕事、私、次回作からAIに任せる気満々です。

 

 

さて、ここからが本題です。

このAIが、もし「音楽」の領域に来たらどうなるでしょうか?

 

音楽とAIの未来

もし来たら、という表現は正確ではありませんね。もう来ています。

そして、その精度とできることの幅は、今後ものすごいスピードで拡大していくと予想されます。

 

「ピカソっぽい絵を描いて」といえばピカソ風の絵を描けるAIがいるのです。「ビートルズっぽい曲を作って」に応えられるAIだって、理論上は可能なはずです(なんなら精度はさておき、私が知らないだけでもういるのかもしれませんね)。

ミックスマスタリング分野ではiZotope社が先陣を切ってとっくにAIパワーが導入されていますし、AI作曲だって今後Midjourneyクラスのものが出てくれば、人々は音楽をやっているいないに関わらずそれにのめり込むはずです。
美術に興味がない私が、Midjourneyにハマっているように。

 

そのとき、作曲家はどうすればいいのでしょうか?

私は、3つの道があると考えています。

 

  1. まったく新しい音楽をつくる(創造)
  2. AIとの会話スキルを磨く(利用)
  3. 割り切って趣味として楽しむ(無視)

 

【1について】

まず前提として、AIとは「過去のデータから学ぶ」ものです。ピカソっぽい絵が描けるのは、過去にピカソの絵がたくさんあったからです。
AIは、学んでいないことは吐き出せません。「うちのお父さんっぽい曲を作って」と命令しても、お父さんが音楽を世に出していなければAIにはちんぷんかんぷんです。

ですからこれを逆手にとって、自分がAIにとって「未知の存在」になることで、一時的にはAIより市場で優位に立てるでしょう。
過去のどのジャンルとも違う、まったく新しい自分だけのオリジナル。そんなものが作れれば、つまり自分が何かしらのジャンルの「元祖」になればいいのです。

 

しかし、個人的にこれは現実的でないと考えます。なぜなら、そもそもそんなことは99%のミュージシャンには不可能だし、仮に出来たとしても、それが大衆に受け入れられる可能性は極めて低いからです。

そして万が一大衆に受け入れられ、時代のパイオニアになれたとしても、AIは有名になったあなたの音楽をすぐに学びます。
そんなものAI及びAIビジネスからしたら格好の餌ですから、率先して予算を組まれてすぐに学ばれるでしょう。そうなればもはや、「AIに真似できない音楽」として売れたあなたのセールスポイントはどこにもなくなります。

 

「俺はAIに作れない、俺だけの音楽をつくるんだ!」は多くのミュージシャンが将来語るでしょうが、私はその結果が成功で治まるとは、到底思えません。

 

【2について】

私個人としては、ここが狙い目だと思っています。
AIを動かすには、AIに命令を出さなければなりません。

例えばMidjourneyに「ピカソが描いたエレキギター」を描いてもらうには、

/imagine prompt erectric guitar painted by Picasso

と入力する必要があります。

 

この文章を書くためには「プログラミング的思考」「英語力」が必要です。

 

まあプログラミングの方は、意識せずとも実行できるようにプラットフォーム側がUIを整えてくれますが、肝心の命令内容に関しては現在のところ英語一択です。日本語は使えません。

ですから、「ピカソが描いたエレキギター」を英語で書けないと、そもそも命令ができないのです。
とはいえ、よほど高度なことを命令しない限りは「中学レベルの文法&知らない単語はGoogle検索」でなんとかなるのが私の印象です。

 

これを音楽に置き換えると、私たちはむしろ有利と言えるのではないでしょうか?コード、スケール、BPMなど、音楽の専門用語と意味、使い方を、私たちは大衆よりもたくさん知っています。この知識は間違いなくアドバンテージになるはずです。

上手にAIと会話して、頭の中にある音楽を精度高くアウトプットする。このスキルが、音楽のMidjourneyが登場した際にも必須です。
AIをうまく利用して、素晴らしい音楽を作れたら最高ですね。

 

【3について】

今まではずっと「音楽の仕事が奪われたらどうしよう」的目線で書いてきましたが、別に仕事としてしか、音楽を続けちゃいけないわけではありません。

趣味として細く長く続けたっていいと思います。皮肉ではなく、本心からそう思います。
ギターを鳴らすのがたまらなく好きだ、のようなプリミティブな気持ちを否定する気はさらさらありませんし、その気持ち一発で非営利で音楽を続けることは、とても美しく人間的であると思います。

近い将来、AIに仕事を奪われて職を失うエンジニアや作曲家が大量に生まれるはずです。そのとき彼らは絶望するでしょうが、きっと音楽を好きでいれば、幸せな人生が送れると私は信じています。
バイトで生活費を稼ぎ、空いた時間で音楽をやる生活に逆戻りするのは精神的にきついでしょうが、それでもきっと音楽は楽しく、美しい。

そこを割り切れる人は、時代がどう変わっても生き残れる人だと思います。

 

まとめ

未来を予想することは大切ですが、必要以上に恐れる必要はありません。

Midjourneyは、確実に人類を前に進めるでしょう。インターネットが登場した時のように、古きものが淘汰されて新しいものが世界を変える。これは人間として生きていく上で、避けられない出来事です。

 

ですから、私たちにできることは、未来を悲観的に見ることではなく、技術をどう利用するかを前向きに考えることです。

私たちの過ごす現代は、いつか必ず「古い時代」になります。そのときそこにしがみついていたら終わりです。新しいテクノロジーを否定した人間が、次の時代を生き残っているところを私は見たことがありません。

 

一緒にこの波に乗りましょう、手始めに、Midjourneyで遊んでみてはいかがでしょうか?

 

では、来週もお楽しみに!

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